



飛鳥時代に聖徳太子により開らかれた信貴山は、日本最古の「毘沙門天王」霊場として知られる祈りの山。玉蔵院は信貴山の山内塔頭として平安末期に創建。祈願寺として、また宿坊のあるお寺として広く親しまれています。

玉蔵院の四季
玉蔵院の四季や行事、
日々の取り組みをご紹介しています。
令和5年 後寅(2023年)9月 22日
謹啓 梅雨の季節となりましたが、皆様方におかれましては御健勝のことと存じます。
謹啓 漸く秋らしくなってきましたこの頃、御信者の皆様におかれましては益々ご清祥のことと存じ上げます。
酷暑の今年は熱中症患者も多く、またたび重なる台風や線状降水帯により、日本各地で水害・土砂災害が発生し、多くの被害者が出てしまいました。亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げ、被災者や関係者の方々の御健康をお祈り申し上げます。日本のみならず世界中で、記録的な猛暑の夏でした。この暑さの中、スポーツの世界大会にて多くの日本チームの躍進が報道されました。その姿を見聞きすることは、我々にも喜びと力を与えてくれます。今後一層の活躍が楽しみです。
毎日の信貴山の御祈祷のなかで一番多い願い事は、家内安全や健康、心願成就と言えます。昨今の気候変動による災害を見るといかに平穏無事でいられることが有難いことであるかを感じざるを得ません。また試合やテスト、手術など大きな契機に立たされた人の祈願も多くあります。その際本堂において祈願しているのは皆様よくご承知の『大般若経』の功徳を念じた「大般若転読祈祷」です。仏教の経典は多種多様様々あります。その中で大乗仏教の基礎となるのが「空」の思想を説いている「般若経経典類」です。その中の最も長い経典がこの『大般若経』。玄奘三蔵(602年~664年)が長安からインドへ求法の旅を決行され、多くの経典類を中国唐の時代にもたらされ、『大般若経』の翻訳事業も完遂されました。そのお話は『西遊記』という物語として後世に語り継がれています。その「般若経経典類」の要約をされたものが有名な『般若心経』です。
「空」とは、あらゆるものは、実体や本性が無く、相対的相互依存的な関係の中で変化し続けている。それ故、幸い・不幸、失望・苦しみ・閉塞感、希望・楽しみ・解放感も変化するものであり、必ず変わるものであるから、焦らず腐らず慌てずに自分なりに精進することが肝要であると説かれます。すべては状況・環境によりかわるものであるので、「不生不滅・不垢不浄・不増不減」と『般若心経』でも説かれています。真言密教においてもその流れのなかで「阿字本不生」と説かれます。すべての存在は「不二」であり区別される存在ではなく、分けることができないと考えられています。つまり人間同士も自然と人間も、そして我々とご本尊毘沙門天様も「不二」の関係であり、我々のなかにも仏様の素晴らしい性質が宿された存在である。だからいがみ合い、足を引っ張りあい、目先の権力闘争などに明け暮れるのではなく、互いに尊厳を尊重することが必要不可欠であると説かれるのです。これを理解するのは難しくはないが、実践することは努力精進が必要です。そのためにご祈祷や修行があるのです。
これから過ごしやすい季節となります。どうぞ信貴山で毘沙門天様の世界で祈りを捧げられ、お寛ぎ下さい。皆様方に毘沙門天王様の御加護があらんことを。 合掌